私の勤務する会社は、金属製品を主に扱う製造業です。従業員が1000人を超える結構大きな企業で、製品的にはトップシェアを持っています。また、新規参入してくる企業も無かったため、ある意味で殿様商売でも通用している会社です。技術的には、一応トップ企業ながらも、技術屋集団と言うよりも、職人集団と言った感じで、工学的判断よりも、昔ながらの「経験と勘」で仕事をする企業です。大学から工学部卒業の優秀な人材は入りはするのですが、あまりの技術の稚拙さに驚く人も多いらしいです。
さて、そんな会社なのですが、私はある上司に非常に大きな不満を持っています。と言うのも、何かにつけてコストダウンばかりを説くのです。確かに製造業にとっては、利益追求の観点から、コストダウンは非常に大きな課題です。しかし、製品の仕様を落としてまでのコストダウンは、あまり望ましく無いものと私は考えています。しかし、その上司は、そのコストダウンを顧客のことを一切考えずに決行するのです。
さて、そんなコストダウンばかり実行した商品ですが、ある時に事故を起こし、顧客に多大な迷惑をかける事件がありました。その事故は人身事故までは至らないまでも、物損面で大きな事故だったので、会社としても非常に良くない立場に追い込まれました。それは、商品の引き上げにまで発展したからです。その上司はセールス部隊にまで嫌われました。さて、その事故の結果、その上司は賞罰委員会にかけられ、減給となりました。当然その上司の立場も無くなりました。しかし、全然懲りずに、相変らずにコストダウンばかりを説きました。
そして、何年かの月日が経ちました。その事件を知る者も次第に減り、事件は風化してしまいました。さて、そんな中で、ある時の人事異動で、その上司の役職が上がってしまいました。恐らく人事部門も、その事件を忘れてしまっていたらしく、その上司の職位を上げてしまったのです。また、どうやら会社の中に、慢性的な人手不足が発生していたらしく、そのポストに入れる人材も居なかった様子です。そして、その上司は部門のほとんどを統括する権限を握ってしまい、相変らずコストダウンを説いています。
もしかしたら、次の商品においても、製品事故を起こすかも知れませんが、もしかしたら、その上司の頭の中には、顧客に対する誠実さが完全に欠落しているのかもしれません。そして、私は顧客に迷惑をかける前に、その上司が失脚することを願うようになりました。しかし、それは無理な様な気もします。なぜかと言うと、とにかく口が回る上司だからです。全く残念過ぎる上司です。
