私が、家族経営の美容サロンでアルバイトをした時の話です。憧れの美容業界で働けるという夢は、最初の段階から暗雲が立ち込めていました。まず、面接の時にはっきりと、「うちは零細企業だから、雇用保険や厚生年金には入れません」と言われました。最初はどちらにしても週3勤務だったのでよかったのですが、気づくと週5出勤になっていました。それでも雇用保険や厚生年金にはいれてくれませんでした。シフトが前日に社長のプライベートの都合で変わることもしばしば。そして、タイムカードが30分毎だったのですが、残業をしてもあたりまえに29分で退勤を押されてしまい、仕事をそのあといくらしても、残業代は出ませんでした。家族経営が故に、残業代未払いは違法だということを知らなかったんだと思います。お金にならない残業を、毎日2時間くらいしていました。
そのうちに、ついに職場には会計監査まで入りました。どうやら会計でも違法行為をしていたようでした。他のアルバイトは、その違法性に気付いた人から辞めていってしまいます。毎日新人が入り、教育しては辞めていく繰り返し。ついに私も嫌気がさし、引き止められながらもやめることにしました。
しかし、実はそれまで、給料は手渡しで頂いていました。次の会社が決まり、確定申告に使う源泉徴収を前の会社にお願いしたところ、それすらでない始末。新しい会社に説明し、書類なしでやっていただくことになりました。取得したお客様の電話番号に、勝手に営業電話をかけてしまう常務。事務所で家族喧嘩をする、社長と副社長。株式会社の形をとっていましたが、本当になにも法律のことを理解していない、会社としての自覚のない家族でした。
今では、いい社会勉強になったと思えるようになりましたが、会社としての自覚がない家族経営の会社には、もう2度と入りたくないと考えています。結局、私がやめて一年くらいだった時には、その会社は潰れたそうです。残業代が貰えず、休憩もあまり貰えない職場でしたが、高い勉強代だったと思うことにしています。今の職場は会計ホワイト企業で、ホワイトな分だけ前の会社のブラックさをしみじみと感じるようになりました。転職の際、焦らずに良い会社を選ぶことが何より大切なんだと、今は心から思います。
ただ、実は当時の私は、雇用保険は条件を満たしたら入らなきゃいけないということを知りませんでしたので、経験しながら学べて結果的にはよかったかな、とも思っています。
