このお話は僕がまだ社会人なりたての頃の話です。僕は中卒で学歴が無く、仕事を探すのに凄く手間取っていました。そんな中やっとの思いで見つけたのが営業マンのお仕事でした。最初務めた企業さんは、一般家庭の一軒家の屋根や壁の塗り替えを電話一本で勧める、『テレアポ』という営業でした。

 

声しか伝わらない分、難しいお仕事でした。僕なりに一生懸命勤めていたのですが、ノルマが思うように達成できず3ヶ月でリタイヤしてしまいました。ですが売上をそこまで上げていないにも関わらず、手取りの給料は僕がアルバイトをしていた頃とは雲泥の差でした。それを良くした僕は、次に挑戦したのが直接個人のお宅へ訪問販売する布団屋さんでした。まさかブラック企業に自分が勤めるとは思いもしなかったです。

 

まず布団屋さんのお仕事の内容を簡単に説明致しますと、個人のお宅へ訪問する→古い布団が無いかを探る→あれば新しい布団と無償で交換する→代わりに布団が湿気でダメにならないように除湿剤を置いていく→後日除湿剤の代金を請求する。という無理矢理な販売方法でした。消費者側にはクーリングオフという制度があるから大丈夫、と先輩から言われ、罪悪感を抱きながら黙々と古い布団を集めて回りました。順調に売上を伸ばしていき、気が付くとノルマは既に達成していました。

 

そんなある日、先輩と一軒の古民家風のお宅に一緒に訪問に訪れました。出てきたのは、80過ぎのお婆ちゃんでした。耳が聞こえづらいのか、僕達が古い布団は無い?と聞くと返事がありませんでした。僕のお婆ちゃんも同じくらいの歳で、少し重ねていた所もあったのか、僕はこのお婆ちゃんにこれ以上突っ込んでいくのは可哀想だと思いました。

僕が先輩に止めませんか?と聞こうとしたその時、先輩は普通ではあり得ない行動を取ったのです。

 

お婆ちゃんが黙っているのをいい事に、まず家の中に了承も無く上り込んでいったのです。

それどころか、押し入れの中のありとあらゆる物を全て出し始めたのです。そして空っぽになった押し入れに、新しい布団一式と必要以上分の除湿剤を置きだしたのです。総額はなんと300万円、お婆ちゃんにとても払える額には思えませんでした。それでも先輩が手を緩める気配が無いのを横目で見ていて僕は思いました。

 

「もしかして、僕は犯罪に片棒を担いでしまっている」のではないかと。それから一旦帰社した時に先輩から一言言われました。「今更やり直すそうたってそういかんけぇの、よう考えーよ」その言葉で僕は確信しました。此処は間違いなくブラック企業だと。これ以上人を騙してまでお金を得るというのは、僕自身許せなかったので直ぐに辞表を提出し辞めました。

 

その半年後ですが、あの会社は消費者庁の摘発により、営業停止処分をされていました。ブラック企業と言うのは、勤め初めの頃は分かりにくいかもしれません。ですが、気付いてから行動を起こす事がなによりも重要だなぁと感じました。今現在沢山の方が、ブラック企業で苦しんでいるかもしれませんが、僕のこの体験談を読んで少しでも気づきにして頂ければと思います。

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