ブラック企業の定番売り上げ至上主義

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成績も悪く、就活対策も考えずのほほんと学生生活を送っていた私は、時代が就職難という事もあり就職に最後まで苦労しました。年が明けても内定が決まらず、就職課の方から紹介された企業の面接へふらふらと伺い某通販会社に就職しました。

 

通販会社という話でしたが、現物販売略して現販の部門に回され東北の地方都市で着物を売る事になりました。着物のきの字も分からず、知らない土地でそれを売ると言う事に全く馴染めないまま、これでは会社に貢献も出来ないし自分には無理だから辞めようと思っていましたが、店長が面倒見のよい人で、去年入ったと言う先輩も優しく3ヵ月辞めずに居ました。

 

先輩が失踪しました。山間部の谷沿いの集落に集金に行ったまま帰らず、店長と捜索に行きました。事務員二人は大変なことになったと事務所で青くなっていました。男性3名、女性事務2名の小さな営業店でした。失踪して2日目、事態は急展開しました。先輩の部屋から反物が沢山出てきました。どういう事だろうか?事情が呑み込めない私に店長が言ったのは「空(カラ)だ」

 

カラとはなんだ?店長や事務員が話すのを聞いて漸く呑み込めたのは、先輩は売れていないのに売れたことにして売り上げを計上して、最初は入金していたものの金が回らなくなり、延滞が次々に出てどうしようもなくなって逃げたという事です。本社から役員が後退してきて、状況を精査するなど大問題になりました。親が買い取る事で刑事事件にはなりませんでしたが、金額で900万円、親は助けて下さいと言って、店長は返品を受け付けて欲しいと本社に訴えましたが、本社は首を縦に振らず、弁済させました。商品は戻って来たのだから返品を受け付けてやれば良かったのにと思いました。

 

私は店長が辞めないでくれと懇願するので、何とか店のナンバー2で半年頑張り、店長が一人前になったなと褒めてくれました。そして空売り事件、その後の業績低迷に責任を感じていた店長は退職しました。部長が来て私に店長をするように言いました。私はびっくりして無理ですと言うと、他に人はいない、お前がするしかない。お前がやらないなら、店は閉鎖、事務は首、お前は別の店に転勤と進退きまわりました。店を潰せば事務は首でお客様にも迷惑を掛けるのでやけくそで店長を引き受けました。

 

地元採用で女性の営業を3名入れて体制を整えました。店長になったら店長の苦労が良く分かりました。部長、その上の事業部長から、売れ売れの叱咤激励が毎日きます。店長の仕事は売り上げ計画の作成、販売千手の立案、販売の実践、人の採用と教育、債券の管理そんなところですが、何も教えず日々自分でもがいて知識を得て行くというありさまでした。

 

それでも何とか3ヵ月休まず働き、頭も体も慣れてきましたが、売り上げは低迷したままです。来月は決算だと言うのに、売り上げは大幅未達、赤字は一杯でした。朝部長から電話が来ました。「店長今月どうなの?」「済みません、あと三日で今月も締めですが売り目に200万円足りません」「そんなことじゃ困るだろう!どうするの」「来月頑張ります」「来月じゃ駄目だな、何としても今月は目標達成しないと」「あと3日しかなく無理です」「カラ、カラ、カラ!」「え?」「カラだよ、伝票切ればいいんだよ。良いね来月は来月。今月後200万円売上上げるように」「え!?どういうことですか?架空売り上げですか?まずいでしょう?」「良いの上が言ってんだからしょうがないの」

 

これはまさに粉飾決算の強要でしょう。ついにブラック企業もここまで来ました。私は3ヵ月休みなし。午前様の帰宅も当たり前。労務管理など何もありません。このブラック企業はこの五年後全国の店長を筆頭にした職員の頑張りで上場を果たしました。粉飾決算は無いと信じています。

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